結局、何が見られているのか?

まずは健康な身体づくりから!

 さて、これらの試験科目のなかで、何が重要視されているのだろうか。

 学校説明会で話される内容に多少のヒントが見つかった。それは「独立自尊」「社中協力」「獣身」というキーワードである。

 まずは慶應義塾の基本精神でもある「独立自尊」だ。慶應では、何事も自分のアタマで考えて行動することを重要視している。

 福澤諭吉先生のお言葉で「天賦の気品如何にも高潔にして心身洗ふが如く一点の曇りを留めず」とあるが、頭が良くても運動が出来てもそれだけでは足りない、発想力や気品を備えていることが何よりも大切なのである。

 幼稚舎には立派な工作室がある。それもまるで美大のような空間だ。発想力をいかに養うかという点についても教育上、重要視されているのだろう。芸能人でいえば、たとえばOGの森泉さんなんかは、いかにも幼稚舎らしさが出ているように思う。

 次の「社中協力」も福澤先生が唱えた思想だ。在校生・卒業生・教職員が協力して慶應を盛り立てるという意味がある。「3人寄れば三田会」といった言葉があるように、卒業生たちの連帯意識の強さは実社会でも発揮されている。

 この精神は、試験科目にもある行動観察で、そのポテンシャルがあるかどうかも含めて先生たちからしっかりと見られているのだろう。

 そして最後の「獣身」というキーワードも外せない。この「獣身」というのは福澤先生が教育の鉄則として『福翁自伝』にも書かれている「先ず獣身を成して後に人心を養う」という言葉からくるもの。“獣”と書かれているが「健康な身体」という意味だ。ちなみに、この言葉のあとには「犬猫の子を育てると変わることはない」と続いている。

 幼稚舎がペーパーテストを実施せずに体操テストを重視しているのは、この教えによるところが大きいようだ。

 そして、幼稚舎に入学したあとも、子どもたちは「獣身」をつくっていくことになる。幼稚舎での6年間はクラス替えがない。勉強は文科省が義務とする最低限しか課せられないのだ。その分、彼ら・彼女たちは中等部や普通部に進学後、学力レベルの高い外部生とともに徹底的に勉学に励むことになるのだが……。


<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。港区で生まれ育ち半世紀を過ごしている。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。