「最近のLGBT運動は、同性愛者や性同一性障害者の中での勝ち組と負け組をつくり出している」と言うハルオミさん(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。今回は都内在住で、非常勤や派遣講師で生計を立てるハルオミさん(52歳)のケースに迫る。彼は子どもの頃から、恋愛対象が同性だった。

 都心のビル街が虹色に染まった。横断幕や小旗、うちわが躍る。プラカードには「結婚したい!」「多様性=強み」「自分らしくいられる未来を」のメッセージ。風船で埋め尽くされたフロート(山車)から1970年代のディスコミュージック「セプテンバー」が流れる。若者はもちろん、車いすに乗った高齢者、家族連れといった参加者が沿道の人々とハイタッチを交わしていく。

 2017年5月、東京・渋谷。LGBTなど性的少数者への理解を訴える東京レインボープライドのパレードが開かれた。6回目となる今年は、過去最高の約6000人が参加。企業の出展ブースでは、博報堂DYグループのLGBT総合研究所をはじめ、ブライダルや美容、保険、アパレル、旅行業界などの各企業がLGBT向け商品やサービスを紹介した。

「年収100万円のゲイには何の恩恵もない」

 ゲイのハルオミさん(52歳、仮名)は今年もパレードには参加しなかった。無精ひげを生やし、帽子からシャツ、パンツまで全身を黒で統一。冷めた口調でこう語る。

「かつてないLGBTブーム。すてきなホテルで結婚式を挙げることができて、旅行や化粧品におカネをかけられるエリートにとっては、いいでしょうね。でも、私のような非常勤講師で生計を立てている年収100万円のゲイには何の恩恵もありませんよ」

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 筆者は性的少数者への偏見をなくすためには、さまざまな手法のアプローチがあっていいと思っている。一方で、年を追うごとに広告代理店や企業の存在感が増していくイベントに対し、「企業は金儲けになるからやってるだけ」「LGBTへの理解が進んでいるとは思えない」といった批判が、当のLGBTたちの間から出ているのも事実だ。

 ハルオミさんは続ける。

「イベントがいくら盛り上がっても、いじめや差別がきっかけで貧困に陥ったり、セックスワークに就かざるをえなかったりするような最底辺の人たちは疎外されたまま。最近のLGBT運動は、同性愛者や性同一性障害者の中での勝ち組と負け組をつくり出してしまっているんじゃないでしょうか」