テレビを見ていて「ん? 今、なんかモヤモヤした……」と思うことはないだろうか。“ながら見”してたら流せてしまうが、ふとその部分だけを引っ張り出してみると、女に対してものすごく無神経な言動だったり、「これはいかがなものか!」と思うことだったり。あるいは「気にするべきはそこじゃないよね〜」とツッコミを入れたくなるような案件も。これを、Jアラートならぬ「オンナアラート」と呼ぶことにする。(コラムニスト・吉田潮)
騒動のあと、地元の埼玉では破られたポスターが目立った

オンナアラート#0 豊田真由子

 オンナアラート、初回にふさわしいかどうか微妙だが、「このハゲーッ!」と秘書に対する品格の欠如した罵詈雑言の数々で、茶の間を震撼させた豊田真由子である。もう、この夏は真由子のミュージカル調と赤ちゃん言葉を駆使した脅迫スタイルが大流行。いや、流行していないけれど、話題をかっさらったよね。

 私としては、秘書の娘に対する脅迫ととれる文言が最大のアラートだった。

 彼女は女なのに、少女を恐ろしい目に遭わせるようなことを平気で口にするのか、と思った。たとえ話にしたって、そんな文言が口から出てくることにびっくりした。さらに彼女には娘がいると知り、もっとびっくり。

 桜蔭→東大→ハーバード→厚生労働省と、とんでもねえエリート街道を歩んだ人が、こんな人の心を欠いた暴言を吐くようになってしまうのか。最も恥ずべき言葉だったと思う。私の母は真由子の声がテレビで流れるたびに、「心臓がドキドキする」と言っていた。それはたぶん不整脈だと思うのだが。

 真由子はしばらく雲隠れした後、粛々と謝罪会見をする姿、そして必死に地元をお詫び行脚する姿が流れてきた。平身低頭、くしゃくしゃの泣き顔、でも『週刊新潮』の記者に対しては、道理の通らない言い訳を通した真由子。なんにせよ、あの衝撃的な罵声を聞いた後では、すべてが嘘に聞こえてしまう。

 バラエティ豊かな罵詈雑言のアイデアには、正直、度肝を抜かれたのだが、まあもうこの人を国政の場で見ることはないだろうなぁと思っている。

もうひとつのオンナアラート

 で、なぜそんなオワコンである真由子をもってきたかというと、知人の談が非常に興味深かったからだ。先日会った知人女性が「真由子の気持ちもちょっとわかる」というのだ。え? 耳を疑った。真由子のどこに共感ポイントがあったのか? 彼女いわく、

「私も、部下の男が仕事できなさすぎて、ホンットに使えないんだよ。しかも言い訳ばっかりで、尻ぬぐいするこっちの身にもなれよ、っていつも思ってる。だから、真由子様が(彼女は皮肉も込めてこう呼ぶ)あのオドオドした仕事できなさそうな秘書の男に対して、荒々しくなった気持ちはちょっとわかるんだよね~。さすがに暴行とか、人品卑しい文言はないなと思うけど」

 彼女は私と同い年。大きな企業に勤めていて、部下もたくさんいる。そうか、組織で働いていると、そういう目線のオンナアラートもあるのかと知る。

「あれは、秘書が“男である自分”を“横柄にこき使う女”に対して、意趣返しをしたんだと思う。男社会に特有の“女バッシング”のひとつだよ」

 目からウロコだった。真由子のメイクが変だとか、あぶらとり紙をすっと差し出したいとか、独自のどうでもいい細かい解釈をする友達は多々いたけれど、「男の逆恨み説」を説いたのは彼女だけだった。

 彼女は決して真由子を擁護しているのではない。

 ただ、男社会におけるえげつない嫉妬、上司が女であることへの男の卑屈と鬱屈、という着眼点は面白いなと思った。日本全国が真由子の言動に眉をひそめた中で、彼女のようにちょっとした共感を覚えた女性もいたのだ。もし、暴言を吐いて暴行したのが男の議員だったら、どうだったのか。同じように話題になっただろうか。 

 オンナアラートというのは、すべての女が同様に感じるモヤモヤというわけではない。物事を見る角度によっては、いろいろなアラートが存在するのだ。私には私のオンナアラートがあるので、これから徐々に書きなぐっていきたい。「え? モヤッとするのはそこ?!」と思っていただければ、本望です。


吉田潮(よしだ・うしお)◎コラムニスト 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。テレビ『新・フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターも務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に(生活文化出版)、(講談社)ほか多数。新刊に登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。公式サイト『吉田潮.com』