世界的な「脱原発」の動きに逆行しているとも言える、安倍政権の原発政策。4年10か月に渡る安倍政権下で推し進められてきた再稼働の実態と、それに抵抗する人びとの声を被災地からレポートします。

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 10月10日、くしくも衆議院選挙の公示日に、福島地裁で『生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟(生業訴訟)の判決が出た。福島第一原発事故によって被害を受けた福島県、また隣接する宮城県、茨城県、栃木県の住民およそ3800人が起こした注目の裁判。判決は国や東京電力の責任を全面的に認める内容だ。勝訴を受けて、弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士は「国難突破判決だ」と言い切る。これまでの自民党の、そして安倍政権の原発政策に疑義を呈するものだ。

国と東電の責任を認める画期的判決で勝訴を勝ち取った生業訴訟の原告弁護団 撮影/木野龍逸

 公示日のこの日、安倍首相は福島市佐原の小さな空き地で第一声をあげた。同日、同じ市内にある福島地裁で、原発事故をめぐって国と東電の責任を問う判決が出るにもかかわらず、演説の中で被害者に対して言及することなく、復興をアピールし、衆院選の争点に掲げる少子化問題や北朝鮮の脅威の話題に終始した。

 4つのプレートが重なり、2000以上の活断層がある日本。狭い国土に事故当時、54基もの原発が立ち並んでいた。そこで進められてきた安倍政権の原発政策、原発事故対応とは、どのようなものだったのか。

 ’12年12月に発足した第2次安倍政権は、スタート早々から前・野田政権が掲げた「原発ゼロ目標」を見直す発言が相次いだ。’14年4月には、新たなエネルギー基本計画(第4次計画)を閣議決定、原子力発電を「重要なベースロード電源」と定めた。原発による電力供給率は’12年当時、約2%。だが新計画を受けて、「長期エネルギー需給見通し」には、2030年までに20〜22%を目標と明記されている。そのためには約30〜40基の原発が必要となり、原発寿命を40年から60年へ延長するほか、新設やリプレース(建て替え)が欠かせない。ドイツやスイスをはじめとする世界的な「脱原発」の動きに逆行している。

 安倍政権下で再稼働された原発は表のとおり。

原発の再稼働をめぐる状況

 今月4日には、新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発6・7号機について、原子力規制委員会が事実上の「再稼働合格」を出した。福島事故を起こした東京電力の原発では、事故後、初めてのことである。立地する新潟県の米山隆一知事は9月に福島原発の事故検証委員会を立ち上げたばかり。米山知事は「福島事故の検証に3、4年かかる」と明言し、検証中には再稼働に同意しない考えだ。

 その新潟県には、今なお2800人以上の避難者がいる。福島県郡山市から新潟市に避難し、柏崎刈羽原発差し止め訴訟の原告でもある高島詠子さん(48)は、こう訴える。

「2度と子どもたちを危険な目にあわせないため、何としても原発を止めたいと原告になったが、審査合格と聞いて、悔しさと不安と、行き場のない怒りが湧いた。原発自体が怖い存在なのに、稼働までしたら何のために避難したのか」

 再稼働を進める一方で、安倍政権は原発輸出にもいそしんできた。’14年にトルコ、アラブ首長国連邦、’17年にはインドと原子力協定を締結。事故収束が見通せず、いまだ被害に苦しむ人々がいる中での原発輸出には疑問の声が多い。