テレビの料理番組での楽しいおしゃべりが印象的な、“ばぁば〟こと鈴木登紀子さん。持病と向き合いつつ、今も日本料理研究家として元気に活躍する秘密を紹介します。

日本料理研究家の鈴木登紀子さん

おいしい朝食で元気な一日をスタート。感謝の心で味わいます

 今年で93歳になりましたけど、食欲がないというときがないのですよ。朝、昼、晩の食事に加え、おやつも食べていますしね。もし、私に食欲がなくなったら、そのときは「お通夜の用意よ」と周囲には言っているのです(笑)。

 食事の内容は年齢とともに自然に変わりましたね。今は、おいしいもの、質のいいものを少しずつ食べるようにしています。身体の声に正直になると、旬の食材を自然と選ぶようになるの。

 お肉も好きで食べますよ。高齢者の健康を維持するには、良質なたんぱく質は欠かせないそうです。とはいえ、量は1食で100gほどですけどね。

 夫が亡くなってからしばらく一人暮らしをしていましたが、90歳を機に次女夫婦と同居を始めました。普段の食事は、次女が作ってくれるのですが、どれもおいしいのですよ。とくに楽しみなのが朝食です。サラダや卵料理、チーズ、フルーツ、パンなどが少量ずつワンプレートに盛られているスタイル。具材やドレッシングを工夫したサラダは本当にうれしい、ありがたい一品ですね。おいしいサラダを作るって、忙しい朝にけっこう大変なことですもの。材料を切って洗ってパリッと冷やして。そんな朝食を1時間ほどかけて、ゆっくりいただいています。

 ただ、塩分は控えめにしているの。だって、とりすぎると“象さんの足”になるのよ。素材が新鮮だと風味が豊かですから、薄味でも十分おいしくいただけます。

よい「おだし」を使って味つけは最小限に

 私にとって「料理」は何よりの健康法です。その時間、夢中になって手や頭をフル回転させますから。和食の素晴らしさを伝えたいと思って40年以上続けている料理教室は、今も月に10日ほどあります。日本全国から生徒さんが来てくれて、私の生きがいです。旬の野菜や魚を使った和食は身体にやさしく、日本人の身体を整えてくれます。

 和食の基本である「おだし」は、インスタントではなく、かつお節や煮干し、昆布などでとってほしいですね。おすすめは私の故郷、青森の「焼干しいわし」。毎年、取り寄せています。子どものころからの懐かしいお味なの。

 いい素材でとったおだしがあれば、味つけは控えめでも十分おいしい。日常的に使うものは何でもいいから、量をケチらず使うのがポイントですよ。

病気のときも「食べる」ことで生きる力をわき立たす

 年相応に大きな病気もしてきました。子宮筋腫、肝臓がん、大腸がん、糖尿病、心筋梗塞……。良いお医者さんに出会えたこともありますが、病気になっても私はくよくよ落ち込みません。余計にストレスがたまるから。なりゆきにまかせ、おとなしく寝て“病気が過ぎ去る”のを待つの。くよくよしていると、周りの人も気が滅入るでしょ。

 入院中は元気になるために、「食べる」ことを意識していました。病院食がおいしくなくても、文句を言わずに食べる。食欲が落ちていても箸をつける。食べることは生きる原点ですから。

 糖尿病についてはこれまで薬をのんだり、インシュリン注射もしてきましたが、おいしいものをあきらめられなくて、この年までなかなかよくならずに来てしまいました。だから病院に行くと、いつも自分から「言いつけを守らない悪い患者が参りました」と先生にごあいさつするのよ(笑)。

体調が悪いときは好きなものを食べて

 体調が悪いときは無理せず、好きなものを少し食べるようにしています。

 どなたにでもおすすめなのがおかゆね。米1カップと水6カップを鍋に入れて、弱火で40分煮るだけ。最後は少し蒸らしてお米を落ちつかせると、ふんわりトロトロになるの。そして、梅干しをほんの少し合わせるの。のどごしがよく、ひと口食べるだけで身体の奥からじんわり温まります。日本人には最高の滋養食ではないかしら。

 料理を作るのがしんどいときは、缶詰を活用するのもいいですよ。私は缶詰が大好きなのよ。娘には「忙しいときは、缶詰でもいいの」と言っています。質の良いさけ缶などをストックして、お留守番のときに食べています。

 人間ですから、疲れて何もしたくない日もあるんですよ。そんなときは白いごはんと、缶詰やたっぷりのおひたしがあれば十分。どんなときでも、食べたら必ず力が出ます。この年まで生きてますと、もう「こうしなくてはならない」というのはないの。無理はせず、「何事もほどほどに楽しむ」という気持ちで過ごしたいと思うのです。

〈profile〉
日本料理研究家 鈴木登紀子さん
すずき・ときこ◎1924年、青森県八戸生まれ。自宅で始めた料理教室をきっかけに、46歳で料理研究家に。40年以上、NHK「きょうの料理」に出演。“ばぁば”の愛称で人気を博す。『のんきに生きる』(幻冬舎)など、著書多数。

出典/『充実時間』()
★「老後不安」を減らして、楽しく暮らすヒントがいっぱい。
※鈴木さんのインタビューはこちらでも読めます。​