イラスト/はらだ有彩

 ふっくら、ぽってりとした頬に、タレ目と下がり眉。低くて丸い鼻と黒い垂髪(すいはつ)がトレードマークの女の子、「おかめ」。正月遊びのひとつ「福笑い」や、某お好み焼き用ソースのアイコンでおなじみの彼女だが、その半生をご存知の方はどれくらいいるだろうか。

 実はこのおかめ、「献身的」なんて言葉では生ぬるい、“超超超・尽くす女”なのである。夫への慕情ありあまってか、彼女は「ええええ、う、嘘でしょ!?」とツッコまずにはいられない理由で突如、自らの手で人生に幕を下ろす。

 いったい何が彼女をそうさせたのか、優しげなニコニコ顔の裏にどんな思いをかかえていたのかを京都に伝わる「おかめ伝説」から読み解くのは、『日本のヤバい女の子』(柏書房)の著者、はらだ有彩さん。

 本書ではおかめの他にも、相手を老人に変えてしまう玉手箱をなんの説明もなく贈る「浦島太郎」の乙姫、惚れた男の周りをウロつき続け、憑(と)り殺してしまう「怪談 牡丹灯籠」のお露など、昔話に登場するエキセントリックな女の子20人がクローズアップされている。

 一見、突拍子もない言動にはしる彼女たちの真意はどこにあったのか? はらださんは、まるで友達とおしゃべりするかのように、それぞれの生き様に思いをめぐらせ涙を流し、怒り、時には拍手と賛辞を送りながら、疑問を解き明かしていく。そして彼女たちの、あり得たかもしれない未来や、もうひとつの人生を思い描く。

 はらださんが織りなす、“ヤバい女の子”たちとの愛ある対話の中から、前述のおかめに関するエピソードを紹介したい。
(以下、はらだ有彩著『日本のヤバい女の子』より)

献身とヤバい女の子・おかめ

 彼女はいつもにこにこ笑っている。目も眉もハの字に垂れ下がり、ふくよかな頬はばら色に染まる。みんな彼女を見ると幸せな気分になる。でも、彼女自身は幸せだったのだろうか。

◇   ◇   ◇

 長井飛騨守高次(ながいひだのかみたかつぐ)は困り果てていた。高次はベテランの大工である。京都・大報恩寺の本堂の工事を任され、張り切っていた。

 しかし、自分でもなぜそんなミスを犯したのかわからないのだが、柱を作るための木材を誤った寸法で切断してしまった。それもただの木材ではない。この日のために信者から奉納された特別な木だ。

(これはもう、命をもって償うしかない……)

 思いつめた高次を妻のおかめが見ていた。彼女は今にも消えてしまいそうな夫を励まし、静かに自分の考えを話す。