ユニークなレシピを生み出す発想の源や、毎日の健康の秘訣について、料理愛好家・平野レミさんに直撃!

料理研究家・平野レミさん

“手抜き”の知恵は日々の食卓から

 お料理にめざめたのは、小学校高学年のころかな。うちに家庭菜園があって、学校から帰ってきたら、トマトをぶちっともぎって、スカートできゅっきゅってふいて、ぶちゅってかじったりすると、おいしくてね。台所をぐちゃぐちゃにしながら、トマトとうどんでグラタン作ってみたり、めちゃくちゃな料理を作っていたの。ままごとをしていても、「おとなは本当の料理ができていいなあ」と思っているような子だったの。

 お料理のアイデアは、だいたい家で作る食事からね。うちは結婚46年になるんだけど、結婚したころに、和田さん(ご主人のイラストレーターの和田誠氏)が“レミの料理を、死ぬまでに何回食べられるかな”っていったのよ。“この人、食べるのが好きなんだ。じゃ、がんばろう!”って思って、料理し続けてたら、こうなっちゃった(笑)

 和田さんは、これまで一回も、私の料理を「まずい」って言ったことがないの。“ちょっと味が濃いかな?”とか言い方が上手。だから、“よし、次は薄味にしよう”って思うし、ほめられれば、また、がんばるしね。だってやっぱり、けなしたりするより、ほめたほうが、お互い気分がいいじゃない? だからうちは、長く夫婦をやっていても、ケンカにならないのよ。

料理がおっくうなら私のレシピがぴったり

 私のレシピは、料理がおっくうな人にも、ぴったんこ。チョー簡単な手抜きレシピだから。水餃子なんかね、一つひとつ皮で包むのたいへんでしょ。だから、タネと皮は別々に加熱して、のっけちゃえばいいの。のどでゴックンするときに、「水餃子だ! おいしい!」って思えればいいのよ。

「食べれば水餃子」のアイデアを思いついたのは、結婚してすぐのころだったかしら? うちで水餃子パーティをやろうとしたら、参加人数がどんどん増えちゃって、これはいちいち皮に包んでたら、たいへんだってことになったのよ。それで、皮で包まないで、皮をタネにのっけちゃえ!ってことになったの(笑)。

 それでね、このレシピは「台満餃子」(※1)と呼んでいるんだけど、それも偶然の思いつき。じつは、その水餃子パーティには漫画家の故・赤塚不二夫さんもいらしてて、「レミさん、こりゃ“怠慢”な餃子だな」っていうのよ。それを聞いて、「そうだ! “台湾”と“満州”をかけて、“台満餃子”にしよう!」って思ったの。本場っぽくていいでしょ(笑)

 このほかにも、「食べればロールキャベツ」「食べればお稲荷さん」とかもあるのよ。めんどうなら、どんどん手抜きしちゃえばいいのよ。

よく寝ることが体と心の元気の秘訣

 いつも元気と言われるけれど、最近はさすがに階段の一段飛ばしはしなくなったわね(笑)。あとは、和田さんのほっぺたが、だんだん丸くなってきちゃったから、これ以上体重が増えないように、お茶碗を小さくして、お野菜のおかずを増やすようになったかな(笑)

 あとは、よく寝ることが健康のコツ。頭にくることがあっても、ワイン飲んで寝ちゃう。寝るのは大好きなの。夜に読書しようとしても、横に本があるだけで眠くなっちゃって(笑) よく寝ると、前の日に頭にきたことも、“まあ、いいや”ってなるしね。ほら、煮込み料理も、ひと晩、時間をおいて寝かせると、味がマイルドになって、おいしいじゃない? 人もひと晩寝ると気持ちがマイルドになるのよ。

 だれでも、年はとるしね。私って元気だから、「レミさんだけは、ずっと生きてるかもしれない」なんていわれるけど(笑)、人って中身は同じよ。「病気かもしれない」って気にしすぎるのも、あまりよくないような気がする。人と比べたりね。人は人、自分は自分だもの。息子もそれぞれにお嫁さんがいるけど、若い夫婦は好きなように生きればいいし。そんなふうに思っていると、ストレスにもならないわね。

「おいしい」の声が何よりうれしい目標

 私ねえ、あんまり目標とか抱負とか考えないの。目の前にいる家族に食べさせたいものや、みなさんに喜んでもらえる料理を、いつも考えているだけ。でも、ふと振り返ると、それがやりたいことだったんだろうなとは思います。やりたいこととやるべきことがあるって幸せですよね。

 街でね、見ず知らずの人に、「レミさん、この間のレシピ、すごくおいしかったわ!」って声をかけられることがあるけど、それがすっごくうれしい。それだけで、その人とは、舌でつながった“ベロつながり”の仲間だもの……。

 あ、わかった! そんなふうにいってもらえるような、ぱぱっとできて、お料理が楽しくなるようなレシピを、もっとたくさん作ることが、私の目標なんだ。それだ、それだ!(笑)

 だってね、塩の代わりに塩麹を使うだけでも、ぐんとおいしくなるのよ。それから、この間、近くのスーパーで売ってた新鮮なタイを、水からゆっくり煮ただけで、すごくいいだしが出たの。おいしかったなあ。手間をかければいいとか、高い食材を買えばいいわけじゃないのよね。

「おいしい」と思うことって、死ぬまで大事よね。どんな仕事をしていたって、仕事をやめたって、食事はし続けるでしょ。食べる楽しみは健康であってこそだし、健康のためには、ちゃんと食べなきゃ。それは、いくつになっても変わらないんじゃないかしら。

[プロフィール]
テレビ、雑誌で数々のアイデアレシピを発信。人間ドックで「5年間来なくていい」といわれた健康体を武器に明るく元気なライフスタイルも提案。

※1:「台満餃子」のレシピはこちら

出典:「NHKガッテン!健康プレミアム」(10月12日発売)
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