舞台『戦国BASARA』シリーズや『煉獄に笑う』の演出を務めた西田大輔の初監督映画『ONLY SILVER FISH -WATER TANK OF MARY'S ROOM』が11月24日に公開初日を迎えた。とある洋館に集められたのは、名前も素性も知らない男女たち。本当の名前を知れば、一度だけ過去に振り返れるという魚“オンリーシルバーフィッシュ”を求めて、あるゲームが繰り広げられる。平成最後の冬に西田大輔監督が贈る、愛と裏切りが交錯する極上のサスペンスミステリー。

 本作で黒ネクタイの男を演じ主演を務めた松田凌さん、ヒロイン・ユキ役の皆本麻帆さん、白ネクタイの男役の玉城裕規さん、バッグハンガーの女役の菊地美香さんに、見どころや撮影秘話、ストーリーにちなんだ“振り返りたい過去の出来事”についてお話をうかがいました。

(※このインタビューは11月24日、映画公開初日に行われました)

左から菊地美香、松田凌、皆本麻帆、玉城裕規

― いよいよ公開初日を迎えましたが、今のお気持ちを教えてください。

松田凌(以下、松田) 撮影から一年が経ち、満を持して、皆さまに見ていただける日がきたという嬉しさと緊張感があります。作品ができてお客様の目に触れるんだなと、感慨深い思いです。

皆本麻帆(以下、皆本) 12月に撮影して、やっと皆様のもとへお届けできるんだなという不思議な気持ちです。ご覧になった方に、どういうふうに思ってもらえるのか、緊張感とドキドキとワクワクでいっぱいです!

玉城裕規(以下、玉城) 西田さんの脳内を具現化した作品だと思います。僕らだけの感覚じゃこの作品の理解は追いつかないので、お客様の意見もふまえてこの作品が出来上がると思っています。どういうふうなことをお客様が思ってくださるのか、すごく楽しみです。

菊地美香(以下、菊地) 一年前に撮りきっていたので、気がついたら今日を迎えていたという感じがします。忘れた頃に届く贈り物のような感じがして、私もすごく楽しみです。

― お客様の反応も楽しみですね。本作は、一回見ただけではわからない「難解で複雑なサスペンスミステリー」と言われています。みなさんは台本を読んですぐに理解できましたか?

松田 正直に申しますと、まったくわからなかったです。台本を読んで読み取れる部分は少なくて、自分の読解力が追いつかない部分が多かったかもしれないですが、だからこそ、演者同士でディスカッションをし、撮影現場で皆が出すお芝居に一人ひとりが影響されて、どういうふうにやっていくか方向や指針を決めていきました。

松田凌

菊地 本当にわからなかったです! 台本も、本じゃなくてペラペラだったよね?(笑)

皆本 うん、ペラペラだった!(笑)

玉城 撮影期間が短かったこともあって、パッと台本を読んでも簡単にはわからないから、もう現場に行ってその時に感じたままでいいかなと思いましたね。

― あまり深く考えずに、感じたままに演じられたのでしょうか? キャスト同士でお互いの解釈について話しましたか?

菊地 あまり話さなかったよね。みんな、瞬発力で演じていたような。 

皆本 「こういうことで合ってるよね?」みたいな意識合わせぐらいで。

松田 気になるところは話し合うけど、逆に、わからなかったから緊張感がありましたね。

菊地 話が難しすぎて、「みんなもわからないよね? あ、わからないまま演じていいんだ」という空気感で、みんなで新鮮にできたのは良かったよね。すごく寒くて、ピーンと冷たい空気だったから、余計に緊張感が増していたのを覚えています。本当に寒くて、その思い出しかないです(笑)。

皆本 本当に寒かった!! 台本は全然わからなくて難しかったし、起きていることにその場で反応していかなきゃいけないなと思いました。「考えるな、感じろ!」って(笑)。

― 西田監督も「わからないまま演じて欲しい」とおっしゃっていましたね。

皆本 はい。私はそのように言われましたので、深く追求せずに、監督が「スタート!」と言った瞬間のみんなの様子を全部キャッチしようとして、気持ちの流れのままに“ユキ”としていました。

皆本麻帆

注目すべきは今まで見たことのないラブシーン

― 登場人物も全員謎に包まれています。それぞれの役の見せどころ、「ここに注目して欲しい!」というシーンを教えてください。

皆本 それはやっぱり、(菊地)美香さんのラブシーンじゃないですか!

松田 あれはもう、ジャック・ニコルソンに並ぶ名シーンだよね。

― 公開初日舞台挨拶でも話題になっていた、“顎噛みシーン”ですね。菊地美香さん演じるバッグハンガーの女がトランペットの男を演じた山口大地さんを妖艶に噛んでいます。あれは台本にはなかったそうですが、アドリブですか?

菊地 いや、まさか!

松田 え? あれアドリブじゃないの?

菊地 アドリブじゃないよ! アドリブであれやったらすごいよね! 台本のト書きには「ボタンを外す」と書いてあったので、ラブシーンかなと思ったんです。洋館で「美香ちゃんさ、あのシーンだけど…」って西田監督に呼ばれたので、「えっ、私、脱がされるの?」って思ったんですけど、「美香ちゃん、(山口)大地のアゴを噛んでもらえる?」って(笑)。「そんなシーンってあんまりないじゃん? 今まで見たことがないラブシーンを撮りたいんだ」と西田監督がおっしゃったので、「なんでもやります!」と言って、やりました(笑)。

松田 そうだったんだ! 大地くんは知らなかったの?

菊地 大地くんにはギリギリまで言わなかった。そっちの方が面白いかなと思って(笑)。私の見どころはそのシーンです。

菊地美香

― 顎を噛まれた山口さんの表情も見逃せないですね。皆本さんはいかがですか?

皆本 えーっと、私の見どころは…。

菊地 私、麻帆ちゃんが登場する「3人!」って言うシーン、好きだよ。

皆本 ありがとうございます! 爽やかな感じの「飲もっ!」みたいな気分で演じています。私がイメージするヒロインをすごく意識してやりました。

菊地 なるほどね。「ちょっと飲もう!」みたいな感じが出てた!

松田 CMみたいだよね。

菊地 ハイボールのCMみたいな感じ?

皆本 はい、そういうイメージです!

― 皆本さん演じるユキの爽やかな登場シーンに注目ですね。玉城さんはいかがですか?

玉城 僕は、意味ありげに出てきて、何もない(笑)。

一同 (爆笑)

― ちなみにどのシーンが?

玉城 いや、もうトータルで。そこまで深く考えずに現場に入って、その場その場でやっていたのですが、完成した映像を冷静に自分で見ていて恥ずかしくなっちゃって…。

― ミステリアスで何か秘密を握っていそうな役どころですが。

玉城 そう。そうなのに、意外に何もない。そこが愛嬌かなと(笑)。

菊地 一人だけ意味ありげに濡れてるよね。

玉城 外、雨降ってたからね(笑)。

玉城裕規

― 松田さんはいかがですか?

松田 僕個人のシーンではないですが、オープニングシーンが好きです。洒落ていて日本映画とはちょっと違った始まり方をしているので、オープニングはぜひ見ていただきたいな。そこから先は映画に没頭していただいて。光や照明が物語のキーになるので、それを念頭に置いて、「なぜ色が変わっているんだろう?」と考えながら見ていただきたいなと思います。

一発OK! 阿吽の呼吸で見せたチームワーク

― 物語の後半では、4人が対峙するシーンがあります。演じてみていかがでしたか?

皆本 音がすごく大きくてビックリしたのを覚えています!

菊地 台本を読んで平面で見ている画が、現場に行って実際に起きたときに「私は今、なんて現場にいるんだろう」と思ったのを覚えています。現場でビックリしましたし、(松田)凌くんの雰囲気がすごく怖いんですよ!

松田 え? 俺?

皆本 確かに、すごく怖かった!

菊地 普段は朗らかな人なのに、このシーンは、役者として、いい意味ですごく怖かった。

― 普段の松田さんとは違う表情が見えるシーンですね。タイミングはうまくいきましたか?

松田 リハはなかったんですけど、あのシーンは一発OKでうまくいったよね。

菊地 阿吽の呼吸だったよね。失敗できないシーンだから、スタッフさんとのチームワークで、集中して一回でできて良かったです。

松田 俺、玉ちゃん(玉城)の足がここにあったの覚えてる。(ジェスチャーで再現しながら)玉ちゃんのお尻がここにあって…。銃口を突き付ける玉ちゃんはすごく素敵でしたよ。カッコ良かった。

玉城 ふふっ。(意味ありげに笑う)

寒さでお互いの距離が縮まった撮影現場でのエピソード

― 撮影中のエピソードで、印象に残っていることを教えてください。

菊地 寒い、早い、眠い!(笑)

皆本 ホントに寒かったよね。

松田 過酷だった?

菊地 私、結構、過酷だったな。夜のシーンだからずっと暗くして撮ってたし、話もシリアスで救いがないから、精神的に結構やられるよね。

皆本 ずっと暗いから、朝か昼か夜かもわからなかったよね。

松田 僕と銀コインの男役の中村誠治郎さんだけ、外ロケが一回だけあったんです。もうね、最高でしたよ! 地底人のごとく光を浴びていなかったから、気分が上がって「外で撮影っていいな。ロケっていいな」って思いました。

玉城 僕は逆でしたね。緊張感やタイトなスケジュールとか、暗かろうが別に苦じゃなくて。あの空気感は、僕は好きなので。ただ、寒さだけは…。それ以外は楽しかったです。

菊地 寒いから、出番がないときもみんな同じ場所に集まってずっと一緒に居たんです。短い時間でとても近くなれたので、それはすごくいい時間だったなと思います。

― 待ち時間では皆さんでどんな話をされたのですか?

松田 何話したっけ?

玉城 芝居以外の話ですね(笑)。

菊地 ホントそう(笑)。

皆本 たわいもない会話をずっと。

玉城 この作品は映画と舞台が連動していて、映画の撮影が先だったのですが、コミュニケーションがまだ取れていない段階で現場に入っているので、そこがコミュニケーションの場になっていました。ホントにたわいもない、探り合いの会話を(笑)。

悔やんでも悔やみきれない、4人が振り返りたいこととは?

― “魚の本当の名前を知れば一度だけ過去を振り返ることができる”という本作にちなんで、最近、「振り返ってやり直したい」と思った出来事を教えてください。

皆本 ホルモン焼きを食べに行って、6種盛りにするか8種盛りにするか悩んだんですけど、8種盛りにしたらホルモン焼きだけでお腹いっぱいになっちゃって。他に食べたいお肉が食べられなかったので、その瞬間に戻りたいですっ!

松田 うわー、それは振り返りたいなー。

皆本 ハラミが食べたかったんです。その時に戻って、6種盛りにすればよかった…。

菊地 私は、(フロントサイドの髪の毛先を指さして)ここだけ髪を金髪にしたんですけど、次に時代劇をやるので、やらなきゃよかったって思ってます。振り返って、やり直したいです。

皆本 えー、それはつらいね。カツラをつけたときにそこは出ちゃうとこだよね。

菊地 …もう、黒く染めます。

松田 今、『魔界転生』という舞台の公演中なのですが、体力的になかなかキツくて。力をつけて明日からの公演をがんばらなきゃいけないと思って、験担ぎでカツ丼を食べたんです。普段はあまりカツ丼を食べないんですけど、その日はカツ丼を食べようと思って。そうしたら、次の日の公演が、個人的にすごく悔しい公演になってしまって…。カツ丼なんて食べなきゃよかった。

― 何があったのですか?

松田 なんか胃もたれしちゃって。験担ぎとかするタイプなんですけど、ああいうのはダメですね。振り返って、そういう自分を改めたいなって。

玉城 僕も同じ作品(『魔界転生』)をやっているのですが、舞台上は乾燥しているので、ミネラルが大事だと思ってスポーツドリンクを結構飲んだんです。そしたら気持ち悪くなっちゃって(笑)。最初のシーンの出番のギリギリまで餌付いてたんです。そしたら涙が出てきて、泣いているお芝居になっちゃいました。

菊地 そんなことがあったんだ!

玉城 シーン的には泣いているお芝居で大丈夫なんですけど、ただ、見てくださったお客様が「あ、泣いてる」って感情移入してしまったのであれば、それは申し訳なかったな、と。

松田 玉ちゃんの目から流れたのは、涙じゃなくて、スポーツドリンクだったんだ!(笑)

玉城 スポーツドリンクです(笑)。

一同 (爆笑)

たくさんの方に見ていただいて、感想を話し合って楽しんで欲しい

― 最後に、Estigmasをご覧の皆様にメッセージをお願いします。

松田 すごく難しい作品だとは思いますが、だからこそ、友達なり恋人なり家族なり、一人じゃなく誰かと一緒に見に行って、この作品を話し合って欲しいです。皆さんの中で話し合って、どういう答えに導かれるのか僕たちも知りたい。“これが正解”という作品ではなくて、疑問の作品なので。皆さんが正解を作って、より多くの方と一緒に楽しんでいただけたらなと思います。

皆本 難しい作品ですが、難しいことを考えずに楽しんでいただけたら、それが一番だと思います。感じて、見ていただいた後に何を思うか。それを一緒に見た方と話して盛り上がっていただけたらなと思います。

玉城 たくさんの方に見ていただいて、いろんな解釈を募集します。自由な意見や素直な意見を聞かせていただけたらなと思います。皆さんがどんな見方をするのか、どう感じるのかが楽しみです。

菊地 私は最初に読んで、わからないとは思ったけど、難しいとは思わなかったんです。正解はないので、気軽に「松田くんカッコイイな」「麻帆ちゃん可愛いな」とか、そういう感想でも映画を見た感想として十分だと思うので、素直に画を見て楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。


取材・文:出澤由美子 撮影:笹原良太〈松田凌〉ヘアメイク:宮本真奈美 スタイリスト:ヨシダミホ〈皆本麻帆&菊地美香〉ヘアメイク:長岐瑞穂 スタイリスト:市井まゆ、春名真由香 衣装:MIDDLA 問い合わせ先:‪03-6447-0193‬‬‬‬‬‬〈玉城裕規〉ヘアメイク:泉脇崇(Lomalia) スタイリスト:ヨシダミホ

<プロフィール>

松田凌(まつだ りょう)●1991年9月13日生まれ、兵庫県出身。2012年、ミュージカル「薄桜鬼」の斎藤一篇で初舞台にして初主演を飾る。以後、同シリーズや「Messiahメサイア」シリーズ等、数々の舞台に出演して人気を博し、主演舞台の公演は毎回完売、6,000人~15,000人を動員する。2013年、「仮面ライダー鎧武/ガイム」に城乃内秀保/仮面ライダーグリドン役で出演。2017年のドラマ「男水!」ではドラマ初主演を務める。主な映画出演作は、『メサイア-漆黒ノ章-』『ライチ☆光クラブ』など。現在、舞台「魔界転生」が公演中。2019年1月10日(木)から、舞台「トゥーランドット」が公演開始。
皆本麻帆(みなもと まほ)●1990年4月21日生まれ。広島県出身。2001年ミュージカル「Annie」で主人公・アニー役を務める。以降、ミュージカル・舞台を中心に、女優として活動する。近年の出演作に、舞台「あの城」・ミュージカル「アメリ」、ドラマ「ヒモメン」(EX)などがある。27日まで東京・明治座にて、12月9日からは大阪・梅田芸術劇場にて日本テレビ開局65年舞台「魔界転生」に出演。来年も2月にミュージカル「イヴ・サンローラン」、4月にミュージカル「いつか~OneFineDay」に出演予定。
玉城裕規(たまき ゆうき)●1985年12月17日生まれ。沖縄県出身。2011年、舞台「少年ハリウッド」の伊達竜之介役で注目を浴びる。翌12年、舞台「弱虫ペダル」の東堂尽八役でも人気を博し、17年のドラマ「弱虫ペダルSeason2」にも同役で出演。舞台「ライチ☆光クラブ」では、劇中「奇人で変人」ジャイボ役を熱演。辻仁成氏の初の脚本・演出作「海峡の光」にも出演、大ヒットコミックの舞台「曇天に笑う」では主演を務め、18年は映画『ゼニガタ』『一人の息子』に出演するなど、幅広く活躍。2019年には、舞台「画狂人 北斎」(2019年1月10日~20日・新国立劇場)、ミュージカル「ふたり阿国」(2019年3月29日~4月15日・明治座)が控える。
菊地美香(きくち みか)●1983年12月16日生まれ。2004年特撮ドラマ「特捜戦隊デカレンジャー」胡堂小梅/デカピンク役で幅広い人気を博す。2005年からは声優活動も開始。主な出演作品は、【ミュージカル】『レ・ミゼラブル』『薄桜鬼 土方歳三編』、『タイタニック』、【テレビ】「ニャンちゅうワールド放送局」「龍馬伝」「カエルの王女さま」、【ミュージカル】「ツバサ・クロニカル」「ガールズ&パンツァー」「ラストピリオド-終わりなき螺旋の物語-」他。また、FLASHデジタル写真集が好評発売中。
<映画情報>

『ONLY SILVER FISH
-WATER TANK OF MARY’S ROOM』

(全国順次公開中)

■あらすじ
とある洋館へと集められた男女。彼らの目的は“オンリーシルバーフィッシュ”という一匹の魚だった。その魚は本当の名を呼ぶことで過去を振り返ることが出来ると言われている。しかし、魚の本当の名前を知ることが出来るのはただ一人。招待状に則って行われるゲームの勝者だけだという。
最初のゲームは一斉に指をさして脱落者を一人決めるというものだった。
ゲーム開始直前、黒ネクタイの男はユキが誰を指そうと考えているかを言い当て、負けるはずだったユキを救う。その後も彼女を脱落させないため、誰にも気付かれぬようヒントを与えていくが、徐々にゲームの歯車は狂い始め…。
黒ネクタイの男は何故ユキが負けることを知っていたのか?
そして彼らはユキを救うことが出来るのか?
それぞれの過去と想いが暴かれる時、このゲームが開かれた本当の意味を知る。

■出演:松田凌、皆本麻帆、玉城裕規、
高柳明音(SKE48)、伊藤裕一、山口大地、小槙まこ、双松桃子、
菊地美香、辻本耕志、中村誠治郎、川本成
■原作・脚本・監督:西田大輔
■音楽:和田俊輔
■企画・製作:メディアミックス・ジャパン
■配給:ベストブレーン

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(c)2018「ONLY SILVER FISH」製作委員