全国の大学、会社から「講義をやって」とひっぱりだこの芸人・キングコング西野亮廣さん。“仕事の広げ方”“エンタメの仕掛け方”“イベント集客”などのノウハウを型破りな視点で語り、聴衆の度肝を抜いている。
「テレビの仕事をやめる」と宣言してから10年――。漫才師、絵本作家、イベンター、校長、村長など肩書を自由に飛び越え、上場企業の顧問にも就任しちゃった西野さん。どうやって“好きな仕事だけが舞い込む働き方”を手に入れたのか。その秘密を綴った異色のビジネス書『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』の一部を、8月12日の発売に先駆けて特別掲載していきます。(毎週金曜更新)

「こういうとこ、西野、嫌いやねん。出たらええやん。(西野は)引くに引かれへんくなってるんちゃう? “ひな壇に出えへん”とか言うてもうたから……」

 これは、ラジオ番組『オールナイトニッポン』の中で、番組リスナーから届いた〈西野さんがラジオで“スタッフの態度が気にいらなかったから27時間テレビの出演を断った”と言っていました〉というメールに対してのナインティナイン岡村さんの御意見。

 ちなみに言っておくと、メールの内容は事実無根で、そもそも僕はラジオをやっていない。放送を聴いた時は、そりゃ驚いた。突然、通り魔に襲われた感じ。その人が自分よりも10年先輩ときた。

 リスナーの釣りメールを鵜呑みにされたことはどうでもいいんだけど(まあ、どうでもよくもなかったけど)、ここで引っ掛かったのは、岡村さんの考え。

 実は、岡村さんがテレビやラジオで僕の活動に言及したのは、これが初めてではなくて、毎度、発言の根っこには「芸人は皆やってるんやから、お前もやれよ」という主張があったんだよね。大好きな先輩なんだけど、この主張には賛同できなくて、「なんで、芸人なのに、皆と同じことをやらなきゃいけないんだろう?」と僕は思っていた。

 岡村さんは「芸人だから、やれ」と言い、僕は「芸人だから、ヤダ」と言う。要するに、岡村さんと僕とでは、「芸人」の定義がそもそも違ったわけだ。

 この本を読んでいただくにあたり、まずは、この「芸人」という言葉を明確に定義しておく必要があると思った。岡村さんは、漫才をして、コントをして、グルメロケをして、クイズ番組をして、ひな壇で頑張って……という、そういった仕事をする人を“芸人”と呼んでいる。

 つまり、ここで言う「芸人」は“職業名″だ。世間の皆様が考える「芸人」も、こっち(職業名)だと思う。人それぞれ、いろんな考えがあっていいし、どこまでいっても他人の人生の責任なんてとれないのだから、否定はしない。

 しかし僕の考えは、岡村さんや世間の皆様のそれとは少し違っていて、進学校を卒業し、皆が大企業に就職していく中、「俺、芸人になる」と言っちゃう奴や、あと2年も働けば退職金を貰えるのに、その日を待てずに「沖縄で喫茶店を始める!」とか言っちゃうオヤジ……そういう人達が、その瞬間にとっている“姿勢”の名前および、“そういった姿勢をとる人”のことを「芸人」と呼んでいる。使い方としては、音楽の「ロック」という言葉に近いかな。エレキギターを弾いていれば「ロック」かといえば、そうではなくて、逆に、ピアノを弾いていても、フォークギターを弾いていても、「ロックだねぇ~」と言う。

 つまり、生き様や姿勢。まあ、そんな感じ。

 僕は漫才もするし、コントもするし、絵本も描くし、学校も作るけど、ひな壇には出ないし、グルメ番組にも出ない。それら全ては自分の中にある「芸人」のルールで、それに忠実に従って生きている。なんなら、「自分は誰よりも芸人」とすら思っちゃっている。

 だけど、岡村さんとは、そもそも「芸人」の定義が違うから、どうにもこうにもウマが合わない。まあ、これは仕方がないよね。

 本筋から外れた人を形容する時に「イタイ奴」という言葉を使うのも、「芸人」を職業名としている人達にありがちな表現で、その言葉を借りるなら、芸人とは本筋から外れた生き方の名前で、「そもそも、芸人はイタイ生き物」だと思っているので、僕は芸人を指して「あの芸人、イタイなぁ」とは言わない。言葉として矛盾しているから。ひな壇に出る芸人がいていいし、ひな壇に出ない芸人がいてもいいんじゃないかな。

「それもいいけど、こういう“オモシロイ”があってもよくない?」と提案したり、時に、「アイツのやっていることは、はたして正解なのかなぁ」という議論のネタになったり、そういった、存在そのものが「質問」になっている人を僕は芸人と定義している。

 まずは、そのことを踏まえて、この本を読んでいただけると、「なんで、芸人のクセに、そんなことをするの?」という寄り道をすることなく、話に入っていただけるかと思う。

 僕は芸人で、とにかく面白いことをしたい。それだけ。

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《プロフィール》
西野亮廣(にしの・あきひろ) 1980年、兵庫県生まれ。1999年、梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。活動はお笑いだけにとどまらず、3冊の絵本執筆、ソロトークライブや舞台の脚本執筆を手がけ、海外でも個展やライブ活動を行う。また、2015年には“世界の恥”と言われた渋谷のハロウィン翌日のゴミ問題の娯楽化を提案。区長や一部企業、約500人の一般人を巻き込む異例の課題解決法が評価され、広告賞を受賞した。その他、クリエーター顔負けの「街づくり企画」、「世界一楽しい学校作り」など未来を見据えたエンタメを生み出し、注目を集めている。2016年、東証マザーズ上場企業『株式会社クラウドワークス』の“デタラメ顧問”に就任。

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