2015年の訪日外国人観光客数は1973万7000人と過去最高を記録。小売店をはじめ、観光バス業界、ホテル業界などがうれしい悲鳴をあげる一方、外国人のマナー違反を快く思わない意見も多く耳にするようになった。

 『』が実施したアンケート『外国人の気になるマナーはありますか?』では、中国人のマナーを指摘する回答が目立つ。

「公衆トイレでドアを開けっ放しで向かい側の知り合いの人と話をしながら用を足していた」(40代女性)

「路上で子どもに排泄させていた」(40代女性)

 中国国内では、世界から同様の指摘を受け、国を挙げてのマナー向上運動に取り組んでいる最中だというが、改善までには少し時間がかかりそう。今後も増加が見込まれる外国人のマナー違反に、私たちはどう向き合えばいいのだろうか。  異文化コミュニケーションに詳しい文化人類学者の斗鬼正一先生に話を聞いた。

「マナーとは相対的なもので、どちらが進んでいる、遅れているということではありません。日本人が麺類を音を立ててすすること、鼻水をすすることをとんでもないマナー違反だと思う外国の人は多いもの。

 特に、食や排泄に関することには生理的な嫌悪感が出やすいものですが、過剰に嫌悪するのはよくありません」

 相手を好ましく思っているかどうかで感じ方は大きく変わるものだという。

「昔は、日本に来る中国人は一部のエリートだけでしたが、国が豊かになるのにつれて、地方の人も少しずつ来るようになった。彼らは海外旅行に慣れておらず、興奮しているのに加え、団体旅行なので悪目立ちするのでしょう。

 また、中国人への過剰反応の裏には、いつの間にか経済成長を遂げた中国に負けたという、悔しさやねたみの感情もあると思います」(斗鬼先生)

 そして、日本人もかつて“ブランドを買い漁る東洋の成金”“ショッピングアニマル”と批判されていたことを忘れてはいけない。

「現在、批判されている中国人の様子は、そのまま、高度経済成長期、バブル期の日本人にあてはまります。絵の価値も知らずに投機の対象として買い漁るため、国内メディアまでが“絵好みっくアニマル”という言葉を作ったくらい」(斗鬼先生)

 中国には「尊老愛幼」という考え方があり、デパートなどで日本人の老夫婦のためにドアを開けてあげていた中国人の若者を見かけることもある。

 個人旅行で来た中国人と“人と人”で交流すれば、マナー違反の根本には文化の違いがあることにも、多少、目を向けられるかもしれない。

「文化的に日本に最も近い韓国人旅行者が増えたレッスン1の時期を越え、今はレッスン2の中国人。レッスン3以降は、文化の違いが大きいインドネシアなどのアジア諸国、さらに中東、アフリカなど、他文化に慣れていなかった日本にさまざまな国の人が押し寄せる。

 日本の少子高齢化問題を考えれば、今後も経済大国でいるためには移民、難民の問題からも目を背けられないでしょう」(斗鬼先生)